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SPECIAL特集

国立新美術館開館5周年「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展

国立新美術館

 

国立新美術館開館5周年「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展

3月28日から開催される「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展。セザンヌ(1839~1906)といえば、「近代絵画の父」と称され、日本でも大変人気のある作家のひとりです。これまで日本でも様々な“セザンヌ展”が開催されてきましたが、今回は満を持して、セザンヌの個展としては国内過去最大級の規模を誇る展覧会となっています。キーワードは「100%セザンヌ」!

本展は、世界8カ国、約40館から油彩、水彩、デッサンなど約90点が出品されます。これらは全てセザンヌの作品、つまり100%セザンヌ作品だけの展覧会なのです。さらに、本展では、セザンヌが画家としての成功を夢見てパリを訪れた、1861年から、晩年にいたるまで、パリと故郷プロヴァンスを20回以上も行き来しながら、作品を描き続けたという点に注目しました。監修にセザンヌ研究の世界的な第一人者であるドニ・クターニュ氏(フランス国家文化財主任研究官)を迎え、セザンヌの画業をパリとプロヴァンスという2つの場所で対比するという新たな視点での展示を楽しむことができます。

これもセザンヌ? 初期の作品にも注目

国立新美術館開館5周年「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展
会場は大きく6つのセクションに分かれています。初期と晩年、そしてセザンヌが描いてきたモチーフを風景、身体、肖像、静物に分けて紹介。「これぞセザンヌ!」という傑作、日本人が思い描くセザンヌらしい温かみのある色彩の作品が並ぶなか、ぜひじっくりと観ていただきたいのが初期のセクションに展示されている連作「四季」です。

「四季」は、銀行家として成功した父ルイ=オーギュストが購入した別荘ジャス・ド・ブッファンの大広間に飾られた作品です。1859年にジャス・ド・ブッファンを購入すると、セザンヌはその邸宅で多くの作品を描き、大広間の室内装飾として描いたのがこの「四季」でした。春夏秋冬を人物で象徴するという連作ですが、この絵を見て「え、本当にセザンヌが描いたの?」と思った人も多いはず。まだ我々の知る“セザンヌらしさ”が薄く、画風にも一貫性がない描線も未熟な雰囲気は初期の作品ならでは。「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌにも、当たり前ですが新人時代がありました。とても微笑ましく、セザンヌがちょっと身近に感じられる作品ではないかと思います。会場では「四季」のほかに3点の装飾画を展示し、当時の大広間の様子を紹介しています。

印象派とは距離を置き目指した“自分らしさ”

国立新美術館開館5周年「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展
1870年代、パリに拠点を構えたセザンヌ。ピサロをはじめとした画家の友人らとの交流から様々な技法を学んでいきます。なかでも同時代の印象派の明るい色彩には少なからず影響を受けているようです。でもセザンヌと印象派って、後世からみるとベツモノな気がしてしまうのも事実。セザンヌは印象派に共感こそしたものの、“画家個人の感情を表現する絵画”を求めていきます。印象派が取り組んだ「移ろいゆく瞬間の表現」を乗り越え、セザンヌは自分らしさを探していきます。その頃、多く描かれたのが戸外での作品、風景画でした。

風景画はパリとプロヴァンスを対比するのにもとてもわかりやすいモチーフといえます。パリではマルヌ川沿いなどを、1880年代になるとそのほとんどを過ごしたプロヴァンスでは、ビベミュスの石切り場をはじめとした身近な場所での作品制作に明け暮れます。南仏の自然を生き生きと描き出すセザンヌの風景画、なかでも傑作「サント=ヴィクトワール山」は、見る人を魅了します。完璧な風景画ともいえるこの作品ですが、そこにはセザンヌが切り取った構図の素晴らしさがあります。清清しいグリーンが目に染みる、春にぴったりな作品です。

「私は1つのリンゴでパリを驚かせたい」

国立新美術館開館5周年「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展
そして、セザンヌが描いたモチーフのなかで最も有名かつ多いのが「静物」。セザンヌがいかに静物画を重視していたのかがわかります。なかでも有名なのが、リンゴです。「私は1つのリンゴでパリを驚かせたい」と語っていたというほど、形態や空間の新たな表現を模索し、一見身近にありすぎて特徴を捉えるのが難しいリンゴに、存在感を与えることに成功したのです。

さらに晩年の創作活動の場となったレ・ローヴのアトリエの一部を再現。このアトリエでは、長年モチーフとして描いてきたものも置かれているようです。静物画に描かれたモチーフもあるかもしれません! 創作の糧となったオブジェの数々や、愛用していたパレットも来日します。これまで知っているつもりだった大御所・セザンヌの作品の魅力を、新たな視点で楽しむことができる展覧会です。100%セザンヌの世界に、ぜひ一歩足を踏み入れてみてください。

<番外編>展覧会の裏側:メトロポリタン美術館研究員 塚田全彦さん

国立新美術館開館5周年「セザンヌ-パリとプロヴァンス」展
国立新美術館で好評開催中の展覧会「セザンヌ パリとプロヴァンス」展。展覧会を開催するにあたって、企画に沿った作品を集め展示することは数年という月日を費やす大変な作業です。本展では、アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン美術館から2点のセザンヌの絵画が来日しています。その作品を所蔵元の美術館から責任をもって日本へ運んでくるという大役・クーリエという任務を担ったのが、同館サイエンティスト(研究員)の塚田全彦さんです。海外の美術館で活躍する日本人研究員、みなさんもそのお仕事についてきっと興味津々なはず。今回は特別に塚田さんのメトロポリタン美術館での仕事についてお伺いしました。

研究員(学芸員)といっても、その専門分野は様々。歴史的背景を専門にする人もいれば、絵画が描かれた素材について研究する人などもいます。そんななか、サイエンティストとして塚田さんは、美術館における所蔵作品を“現状維持しながら保管する”ことについて科学的側面からあらゆる研究をされているそうです。“保存科学”を研究テーマに、作品がどんな構成要素で作られているのか、またそれがどんな外的要因によって劣化や破損のリスクが生じるのか……絵画だけでなく、彫刻などの立体作品、近年では現代美術作品で最新の素材をつかった作品もあり、それらすべてが塚田さんの研究対象になっています。

「例えば、女性は肌のために紫外線を気にしますよね。作品も同様に、紫外線や赤外線といった見えない外的要因によって劣化をすることがあります。私の仕事は、いかに今の状態を保持する環境をつくれるかを常に意識し、美術品に対して最善の保存状態はなにか、ということを日々研究しています」

研究員として「作品を間近に感じられること」が何よりの醍醐味だと語る塚田さん。様々な職種の人が集まり、美術品を最善の状態で見てもらいたいと努力をしているのが美術館という場所。研究員の知恵や工夫によって、展覧会という華やかな場が生まれています。


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