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SPECIAL特集

ボルゲーゼ美術館展

東京都美術館

 

東京都美術館で1月16日~4月4日まで開催される「ボルゲーゼ美術館展」。イタリア・ローマの北東部にあるボルゲーゼ公園内にある予約制の美術館、その珠玉のコレクションが来日。イタリア美術の最盛期を概観できる注目の展覧会です。東京都美術館はこの展覧会を最後に、大規模改修のため約2年の休館期間に入ることもあり、数々の歴史的な展覧会を生み出した会場の雰囲気を味わえる重要な機会でもあります。

17世紀のローマを代表する大パトロンのコレクション

ボルゲーゼ美術館展
ボルゲーゼ美術館は、名門貴族であったボルゲーゼ家歴代のコレクションが所蔵されています。そのコレクションの数々は、世界に名だたるルネサンス・バロック美術の宝庫といわれるほどの名品が揃っており、今回はそのなかから厳選された約50点が展示されます。

ボルゲーゼ美術館のコレクションを日本でまとめて紹介するのは、初めての試み。同館は17世紀のローマを代表する大パトロンであり、コレクターとしても活躍したシピオーネ・カッファレッリ=ボルゲーゼ(1576~1633)の収集した作品が核となっています。彼は当時の教皇パウルス5世の甥として、権力と富を駆使できる地位であり、また一流の審美眼とたぐいまれな情熱によって多くの美術品に触れてきました。その成果が後世に残るボルゲーゼ・コレクションです。

コレクションの中心は古代彫刻の数々とルネサンス美術作品、そしてバロックにかけての彫刻と絵画になります。パトロンとして偉大な芸術家たちを支援していたこともあり、彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ、画家カラヴァッジョなどが挙げられます。コレクションには彼らの作品も多数存在します。名作の多いこのコレクションは「世界で最も著名かつ重要な個人コレクション」とも呼ばれています。

謎多き名作、ラファエロ・サンツィオ「一角獣を抱く貴婦人」

ボルゲーゼ美術館展 ラファエロ・サンツィオ「一角獣を抱く貴婦人」
本展では、ラファエロやボッティチェリといったルネサンスを代表する巨匠、またバロック絵画の先駆けともいわれるカラヴァッジョらの作品が並びます。

なかでも注目なのが、ラファエロが描いた「一角獣を抱く貴婦人」。これはラファエロが20代前半の頃の作品です。若き日の作品とは思えないほどの安定した構図と細かい描写から、天才といわれた彼の実力がうかがえます。

実は、この作品には多くの謎が存在します。1900年頃に撮影された同作品は、今回出品されているものとは構図は似ていてもまったく別の作品のように思えるものでした。モデルの女性はマントを羽織り、手元に抱かれた一角獣(ユニコーン)は見当たりません。そして当時はこの作品がラファエロが描いたものであるということもわかってはいませんでした。しかし、イタリア人美術史家のロベルト・ロンギによって調査が進められ、洗浄と修復を慎重に行った結果、描かれた元の姿が現れたのです。モデルの女性自身や彼女が抱く一角獣からは、ラファエロがレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を強く受けていたのではないかと見受けられるそうです。一角獣は「貞淑」や「純潔」を意味するモチーフ。近年の調査によって、同じ意味合いのある犬が描かれていた可能性も判明しています。

おそらく、18世紀~19世紀頃に一角獣が消され、マントを羽織ったかたちに描き換えられたと考えられています。描き変えられた所持物が象徴するのは、当時のイタリアやヨーロッパで広く崇拝された守護聖人のひとりである「アレクサンドリアの聖カタリナ」。当初は肖像画であった作品でしたが、モデルの人生の経過とともに宗教画へ変化を遂げた、ストーリーのある作品といえます。

今回、日本初公開となるこの作品。謎多き作品に描かれた、気品に満ちたモデルが誰だったのか……最大の謎であります。

およそ250年に渡るイタリア美術の流れをたどる

ボルゲーゼ美術館展 カラヴァッジョ「洗礼者ヨハネ」
他にも様々な作品が初めて日本で公開されます。15世紀から17世紀にかけて花開いたイタリア美術の流れを俯瞰的にとらえることのできるコレクションは、ルネサンスからバロックへと至る、時代の変遷をも感じ取ることができます。

ボルゲーゼ・コレクションの誕生を絵画、彫刻、モザイクといった技法からなる作品ではじまる序章、15、16、17世紀と時代の移り変わりによって登場する巨匠たちの作品が展示される構成となっています。ボッティチェリとその弟子たちによって描かれた「聖母子、洗礼者ヨハネと天使」はボッティチェリの工房で制作された円形の絵画。ルネサンス期の流行や当時の勢いを感じることができる作品です。フィレンツェで花開いたルネサンスは15~16世紀にイタリアの各地に影響を及ぼし、17世紀には新しい表現が多く生まれていきました。本展の終盤で最も話題となるであろう、カラヴァッジョもコレクションの重要な位置を占める作家です。38歳で亡くなったカラヴァッジョ、その最晩年に制作された「洗礼者ヨハネ」はパトロンでもあったシピオーネ・カッファレッリ=ボルゲーゼに贈られる予定であったといわれています。口論の末に殺人を犯し、逃避行のなかで描かれた本作品は、カラヴァッジョがその生涯を閉じた後に枢機卿シピオーネの手元に渡りました。

今展は東京都美術館の改装前最後を彩るにふさわしい、およそ250年にわたるイタリア美術の流れのわかる、豪華絢爛な作品が競演する展覧会です。コレクションの成り立ちだけでなく、ひとつひとつの作品に込められた思いやストーリーを感じながら、楽しんでみてください。


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