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SPECIAL特集

パウル・クレー ―おわらないアトリエ

東京国立近代美術館

 

日本でも人気の高い作家、パウル・クレー(1879~1940)の大規模回顧展がついに東京にやってきました。これまでも数多くの展覧会が開催されてきましたが、本展はこれまであまり触れられることのなかった作品制作の背景をクローズアップ。「クレー作品が物理的にどう作られたか」に迫ります。

作品名に並んだ番号に込められた秘密

「芸術家は、何て色々な役をこなさなければならないのだろう。詩人、自然科学者、哲学者。」
「新版 クレーの日記」(みすず書房)より引用 P288 895<「パウル・クレー展 ―おわらないアトリエ」公式サイトより>

パウル・クレーが生み出す物語性がある作品は、日本人にも深く愛されてきました。音楽や文学にも造詣の深かったクレーの作品は叙情的な魅力があり、温かみのある色彩は独自性が強く、クレーの作風はどんな芸術運動、派閥とも一線を画すオリジナリティー溢れるものでした。

生涯、とても多くの作品を残したクレーは、1911年から自身の作品のリストを作り続けました。4歳のときに描いた作品からはじまるそのリストの総数は、なんと約9600点! 晩年に至っては1年間で1253点を制作しています。作品タイトルにあわせて記載されている数字は、そのリストの番号を示したもの。あの独特の作品世界は、クレーの類稀なる芸術への探究心から生み出されたものだったのです。

作品を通して検証する、クレーの生み出したプロセスとは


本展では、作品リストからも読み取れるクレーがどのように作品を制作したのか、その過程に焦点を当てています。クレーは作品ひとつひとつに関して事細かに素材や制作手法を記載していました。さらには制作プロセスをアトリエ写真というかたちで記録に留めてもいます。

リスト化された作品のなかで、「特別クラス(Sonderklassse)」とカテゴリー分けした作品があります。これらはクレーが手元に残し、次に制作する作品の模範として残しておいたものたちのこと。今回、クレーが最後にアトリエを構えた街・ベルンのパウル・クレー・センターが所蔵する作品を中心に、貴重なアトリエ写真やその「特別クラス」の作品が展示されます。日本初公開のものも多く、クレーがアトリエで眺めていたように、作品を通して未来の絵画を予想するのも楽しい見方かもしれません。

写して、塗って、切って、貼って……新たな角度から名作を

クレーは幻想的な作風の裏側で、様々な実験的試みを行っていました。試行錯誤の中から、クレーの名作たちが生まれていったのです。

独自に生み出した技法のひとつに「油彩転写」があります。鉛筆などで描いた素描を黒い油絵の具で着彩するという技法。それを活用してリトグラフや油彩画を制作しています。会場では素描と油彩転写画を対比して展示し、その技法の秘密に迫ります。ほかにも様々な試みを絵画に加えていったクレー。仕上げた作品を分断し、別々の作品として独立させて完成形としたものもあります。さらに左右を入れ替えたり、上下を反転させたり、まるで子どもの工作のようなアイデアですが、それが作品に新たな息吹を吹き込んでいきました。実は兄弟のような関係にあった作品同士が並ぶ展示にも注目です。

そしてクレーの作品の裏面には、何かが記されていたり描かれていることもしばしば。そんな裏面を公開するコーナーもあります。裏面に記されたメッセージからは、時を越えてクレーからのメッセージが届いたような気分にさせてくれます。

技法や過程という、一見硬いテーマの展示ですが、そんな新たな視点からクレーの作品をあらためて鑑賞することで、これまであまり見えてこなかったパウル・クレーというひとりの人間の人となり、ユーモラスな部分が浮き彫りになります。作品を鑑賞するとともに「クレーに会いに行く」ような感覚を味わえる、そんな展覧会になっています。


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