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SPECIAL特集

黒澤明生誕100年記念画コンテ展 映画に捧ぐ

東京都写真美術館

 

日本を代表する映画監督、“世界の黒澤”こと黒澤明。自身の映画製作に不可欠だった「画コンテ(=絵コンテ)」を紹介する展覧会が開催されます。生涯2000点以上の作品を遺し、映像化にとって重要な役割を果たしてきた作品約140点に、貴重な日本初公開作品10点を加えて展示します。映画に対する熱い想いを、絵コンテを通して感じてみてください。

日本映画界の巨匠“世界の黒澤”

日本映画を代表する映画監督・黒澤明(1910~1998年)。今年は様々な名作を残した黒澤監督の生誕100年にあたります。「姿三四郎」で監督デビューをしてから終戦をはさみ、数々の作品を手がけていき東宝の看板監督として活躍します。映画界入りのキッカケとなったP.C.L.映画製作所への入所は、なんと倍率100倍もするほどの難関だったといいます。

「世界のクロサワ」と呼ばれるようになったのは、東宝を退社後に制作した「羅生門」でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞してからの快進撃があります。「羅生門」での映像手法に世界が注目し、1952年「生きる。」ではベルリン国際映画祭上院特別賞を受賞しました。さらに、1954年に発表した「七人の侍」はヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞し大ヒットを記録。国際的にも高く評価されたこの作品は、現在活躍する映画監督や俳優にもファンが多いことでも知られています。世界的な名誉を手にした“世界の黒澤”は、こうして誕生しました。

その後も「隠し砦の三悪人」や「椿三十郎」などのヒット作を生み出しました。近年、リメイク版が制作され話題となった作品も多くあります。80年代に入ると、海外資本の映画製作が増え、フランシス・フォード・コッポラやスティーブン・スピルバーグといった大物とも映画と通して関わりをもっていきます。1993年「まあだだよ」の公開後、「雨あがる」の脚本執筆中に88歳で亡くなるまで、生涯現役で映画を作り続けた黒澤氏。死後、氏は映画監督として初の国民栄誉賞を受賞し、遺作として「海は見ていた」、「雨あがる」は残されたスタッフにより映画化されました。

画業を志したこともある、黒澤明の絵心

そんな黒澤氏が映画監督になる以前、画家を志していたというエピソードも有名です。若い頃はダ・ヴィンチやミケランジェロといったルネサンス期の作家に影響をうけていて、イタリア美術における絵画や彫刻の美しさに夢中になっていました。実際に本人が描いた作品は二科展に入選したこともありました。

描くことを身近に感じていた黒澤氏。映画の道に進んでからも、その才能は意外な場面で発揮されていました。それが“絵コンテ”です。

「画コンテを描く時、随分、いろんな事を考える。その場所のセッティング、その場面に出る人物の心理や感情、その人達の動き。それを掴まえるキャメラ・アングル、光線の状態、衣裳や小道具、そう云ういろんな事を具体的に考えないと、その場面を画には描けない。
いや、それを考えるために画コンテを描くのだ、と云った方がいいかも知れない。私は、そうやって、映画の一つ一つの場面のイメージを眼に見える様にかため、ふくらませ、しっかり掴んで、それから映画の撮影に臨む。
しかし、どうもこの作業は、シナリオを書く時から、私の頭の中で始まっているらしく、書き損なった原稿用紙の裏にいろんな画が描いてあるのを時々見つけることがある」

実際は撮影前に映画の設計図のような役割として使用される絵コンテですが、黒澤氏にとってその1枚1枚は映画を作り上げる上でとても重要な役割があったようです。

「影武者」の製作が予算面で暗礁に乗り上げた際、作品に対する熱い想いと気迫をこの絵コンテに込めたといいます。その素晴らしさにフランシス=フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカスが感動して製作にこぎつけることができた、というエピソードも残っています。

美術界からも注目される絵コンテを展示

生涯2000点以上もの絵コンテを残したといわれ、またその緻密に描きあげられた1枚1枚は美術界からも注目されています。これまで、パリ市立プチパレ美術館、トルコ共和国イスタンブール市のペラ美術館など世界の美術館で黒澤氏の絵コンテを紹介する展覧会が開催されてきました。

本展では2000点から厳選した約140点の絵コンテを展示します。さらに映画「夢」でゴッホ役を演じたマーティン・スコセッシ氏が所蔵する画コンテ10作品も特別出展が決定。この10点は日本初公開になります。

黒澤氏の描く絵コンテは、実際の映画作品と見比べてみるとその再現性の高さに驚くことと思います。会期中には「静かなる決闘」、「乱」、「羅生門」、「まあだだよ」の特別上映も決定。「映画の1コマ1コマが1枚の写真のように美しい」と世界に評された、黒澤映画の原点を見ることができます。

映画作品だけではない、“世界のクロサワ”の芸術性に触れることのできる貴重な機会です。映画に対する、そして芸術に対する真摯な姿勢が感じられる展覧会です。


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