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SPECIAL特集

ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし

東京都庭園美術館

 

近年、日本での展覧会も多く開かれ注目を浴びているロシア・アヴァンギャルド。その流れを代表する作家のひとりであるアレクサンドル・ロトチェンコとその妻でアーティストでもあるワルワーラ・ステパーノワ。ふたりが駆け抜けた20世紀初頭のロシアの息吹を感じることのできる展覧会が、東京都庭園美術館で4月24日~6月20日の期間開催されます。政治運動や日々の生活と密着した彼らの芸術は、21世紀の今見てもとても斬新なものばかり。「構成主義」とは何か、その答えを探しに庭園美術館へ行ってみませんか?

モダン・デザインの先駆者であったロトチェンコとは何者?

今見てもとてもポップで斬新なこのポスター、この作者がアレクサンドル・ロトチェンコ(1891~1956)です。19世紀末から20世紀初頭にかけて興った、ロシアにおける芸術運動ロシア・アヴァンギャルドを代表するアーティストのひとりです。当時のロシアはソビエト連邦が誕生するなど政治的に大きな過渡期にありました。そのような時代の中で、ロトチェンコはビラやポスターといったプロパガンダ・アートの分野でも活躍した作家でした。

ロトチェンコのポスターや雑誌のデザインが生まれた背景には、まず制作に必要な要素を最小限に絞りこみ、その要素を元にデザインをするという、シンプルに還る手法がとられています。それはメッセージをより効果的に伝えることができ、現在の広告の原型ともいえるかもしれません。産業と密接したデザインは、現代のデザインの基盤となったともいえます。

1920年代になると絵画の制作をやめ、詩人マヤコフスキーと親交を深め、共同でポスターを制作するようになります。キャッチコピーがデザインに反映され、さらにインパクトの強い作品に仕上がる工程は、グラフィックデザインに新風を吹き込みました。また、舞台装置、工業デザインなども手掛け、1924年頃からは写真の撮影を始めます。シンプルですが印象強い刺激的な構図の作品を多く残し、写真作品も高い評価を得ています。

現在の美術家、デザイナー、建築家、写真家などにも影響を与えている作家でもあり、この《「レンギス(国立出版社レニングラード支部)あらゆる知についての書籍」国立出版社レニングラード支部の広告ポスター》をモチーフにした作品を後世の作家がオマージュとして制作した例もあるほどです。

妻で創作活動のパートナーでもあったステパーノワ

ロトチェンコを紹介する上で欠かせない存在なのが、ワルワーラ・ステパーノワ(1894~1958)です。今回の展覧会のもうひとりの主役は、自身もロシア構成主義を代表する作家として活躍しました。また、美術学校で出会ったふたりは後に伴侶となり、創作活動においても良きパートナーとして関わっていきます。

定規やコンパスを用いた、幾何学模様のデザインが彼女の作品の特徴です。モスクワの織物捺染工場で働いていたこともあり、多くのテキスタイルデザインを制作しました。1917年の革命前後、ロシアでは女性アーティストの台頭も目立ってきました。プロゾジェーダと呼ばれる「生産服」の様々なバリエーションを150以上もデザインしました。そのデザイン画の一部なども展示されています。

そのほかにも本の装丁や、視覚詩、雑誌・広告のレイアウトなども手がけ、グラフィックデザインの分野でも活躍していきます。

今展では、ふたりの作品をあわせて紹介します。ふたりの芸術の出発地点は立体未来派。フランスのキュビスムやイタリアの未来派の影響を受け、単純化されたモチーフと構図、色味を使った作品を作っていきます。それぞれに好みや系統が出ているので、対比しながら鑑賞するのもおもしろいかもしれません。

とくにステパーノワの作品はドラムを叩いたり、トランペットを吹いたりと陽気な明るさに満ちた作品が多く、彼女のデザインの源流がうかがえます。

現代でも「カッコいい」デザインが一堂に

ふたりはロシア革命以後、「ロシア構成主義」と呼ばれる考え方の制作手法に移行していきます。芸術に対するあり方について新しい波が次々と押し寄せる時代のなか、個人の直感や感情、趣味思考から生まれる作品ではなく、もっと科学的、合理的に作られるべきだという考えにふたりは傾倒していきました。産業の発展などがめまぐるしく進む中で、生活と密着した芸術とはなにか……を追求しはじめるのです。

そこから生まれた作品は、現在の広告デザインなどの基本となるようなものでした。いかに芸術で日常生活を豊かにできるのか、そんな課題をもって制作をするロトチェンコとステパーノワ。ポスターなどの平面作品だけでなく、日用品のデザインも手がけていきます。ロトチェンコはランプ、椅子、衣服からカフェの内装、新聞を販売するキオスクのデザインまで。ステパーノワはドレスや布地のデザインで活躍しました。いまだに色褪せないそのセンスにきっと驚く人も多いのでは、それらのデザイン画も多く並びます。

今展はロシア国立プーシキン美術館とロトチェンコ・ステパーノワ・アーカイヴ所蔵のふたりの作品170点によりその世界観を紹介します。絵画、グラフィック(ドローイング・版画)、空間構成、建築、デザイン、演劇、印刷物(本・ポスター)、写真という8つのジャンルで構成され、様々なジャンルを横断し、独創的なデザインを次々と生み出していった世紀のカップルの活躍をぜひ堪能してください。


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