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SPECIAL特集

イタリアの印象派 マッキアイオーリ展

東京都庭園美術館

 

東京都庭園美術館で1月16日~3月14日の期間開催される「イタリアの印象派 マッキアイオーリ」。マッキアイオーリ派と呼ばれる、19世紀のイタリアで興った重要な芸術運動の流れをひもとく展覧会。イタリア外務省とイタリア文化財・文化活動省の初の共同企画として、日本初公開作品を大多数が占める63点が並びます。珠玉の作品から、新しい芸術の創生を目指した“イタリアの印象派”ともいえるみずみずしい画風を感じ取れるはずです。

19世紀半ば、フィレンツェに集まった若き芸術家たち

テレマコ・シニョリーニ《セッティニャーノの菜園》
場所は、カフェ「ミケランジェロ」。それぞれが美術を学び、ある程度の技術を習得し画家としてのプライドを持って集まる若き芸術家たちがそこにはいました。イタリアといえば、中世のルネサンスは日本でも多くの展覧会が開かれ、たくさんのファンを魅了してきた美術界にとって欠かすことにできない芸術運動でした。それから時は流れ、新しい独自のスタイルを生み出そうと熱気溢れる議論が交わされていた事実、そしてその成果こそが今展で紹介されているマッキアイオーリに繋がります。

「マッキア派の画家たち」を意味するマッキアイオーリ。主にトスカーナ地方で活躍した、先鋭的な画家たちのグループのことを呼びます。1850~60年代と短い期間ながらも、その特質と魅力を十分に発揮した作品が数多く制作され、近年はイタリアでもその活動が注目を浴びています。関連した展覧会も多く開かれ、ようやくその波が日本へも届いてきました。短い期間で収束してしまったスタイルではありますが、その活動の意義などが再評価され、研究も進んでいるとのこと。今回展示されている作品の多くが、聞いたことのない作家ばかりかと思います。しかし彼らの故郷を愛する思いやそれまでの伝統や因習にこだわらない斬新なスタイルでの絵画手法は、ルネサンス美術に見慣れた目にとても新鮮に映る作品ばかりです。

日本でマッキアイオーリが紹介されるのは、30年ぶり。1979年に新宿・伊勢丹で開催された『イタリア印象派展』以降、なかったそうです。また日本の美術館でマッキアイオーリの作家作品を収蔵している館もなく、本展で展示されている63点のうち、50点あまりは日本初公開作品になります。

母国を愛し、故郷を描いた作家たちの視点とは

ジョバンニ・ファットーリ《森の中の農民の娘》 シルヴェストロ・レーガ《母親》
彼らが作品のテーマとしたものの多くは、母国イタリアの美しい風景。そして生活の断片でした。観光客に馴染みのあるローマ時代の遺跡や都会の風情が漂う場所ではなく、“田舎”というキーワードを彷彿させるような雄大な草原や一見なんの変哲もない海岸線、牛や馬がのんびりと佇む農地など、作家自らが慣れ親しんだ景色ばかりです。そんな美しい自然が描かれた絵画から、トスカーナの雰囲気、そこに暮らす人々の息吹が伝わってきます。

ジョバンニ・ファットーリが描く《森の中の農民の娘》は質素ながらも目を引く衣装を着た若い羊飼いの娘が、青々とした自然に囲まれた作品。娘の佇まいは古典的な人物像、つまり宗教画における聖母マリアのそのポーズを再検討し、自らの解釈で描いたものとされています。日常の平凡な風景を切り取ったテーマではありますが、構図や構成要素など調和が取れた表現の密度の高い1枚です。この時期、こういった調和を重んじる傑作が描かれています。伝統を新たな解釈で再挑戦することは、伝統を一度批判することが必要であり、そういった挑戦的な画風もマッキアイオーリの初期の作品から感じ取ることができます。

風景のほかにも肖像画や室内画なども展示されています。モデルとなった人々は作家の家族や知人が多く、モチーフへの愛情が作品に込められているものばかり。モデルとの親密な関係が生み出す、ありふれているけれども楽しい雰囲気に満ち溢れた情景は光の描き方なども優しく、包み込むような効果をもたらし、観ている側にも優しさを与えてくれます。

マッキアイオーリを知るまたとないチャンス

フランチェスコ・ジョーリ《水運びの娘》
本展では、マッキアイオーリに対する理解を深めてもらいたいと、映像コーナーや様々なイベントも予定しています。イタリアで制作されたDVD『マッキアイオーリ 光の巨匠たち』(約40分)は同館内で常に上映しているので、作品鑑賞とともに母国での紹介のされ方もわかります(日本語字幕付き)。

2月12、19日、3月4日にはワークショップも開催。「水彩で描くトスカーナの光と色」はNHK「趣味悠々」でおなじみの画家で光と緑の美術館学芸課長でもある野村重存さんを講師に招き、水彩画スケッチの基礎を学びながら、マッキアイオーリの画家たちのような光を捉える描き方を体験できます(申し込み方法などの詳細は同館HPで)。

そして3月5日には「イタリア・わが回想-マッキアイオーリの故郷を巡る旅」と題し、同館井関正昭館長によるトークショーを開催。イタリア関連の展覧会を数多く手がけてきた館長によるミニ講演会では、長きにわたるイタリア生活でのエピソードのほか、本展にまつわる裏話が聞けるかもしれません。

イタリアでマッキアイオーリが興った頃、フランスでは印象派の画家たちが台頭していました。日本でも印象派の展覧会が多く開かれてきましたが、本展はまさに「イタリアの印象派」。彼らが追求した芸術の成果、その詩情豊かな作品世界を堪能してください。


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