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SPECIAL特集

マグリット展

国立新美術館

 

マグリット独特のシュルレアリスム

《 空の鳥 》 1966年 油彩/カンヴァス 68.5 x 48 cm ヒラリー&ウィルバー・ロス蔵 Hilary & Wilbur Ross © Charly Herscovici / ADAGP, Paris, 2015 © Photothèque R. Magritte / BI, ADAGP, Paris / DNPartcom, 2015
鳥のシルエットの中に青空がはめ込まれた《空の鳥》、黒いコートに山高帽姿の男が大勢空中に浮いている《ゴルコンダ》、顔の中に女性の身体が描かれた《凌辱》……。一度見たら忘れられない、不思議な絵画で知られる20世紀美術の巨匠、ルネ・マグリット(1898~1967)。ベルギーに生まれた彼は、ジョルジョ・デ・キリコの影響でシュルレアリスムに開眼し、やがてブリュッセルで独自の画風を確立していきました。

シュルレアリスムは、1924年にパリで始まった運動です。マグリットのシュルレアリスムが独特なのは、フロイトの精神分析の影響が色濃いパリのシュルレアリスムと違って、“夢”や“無意識”に重きを置かない点。現在「マグリット展」を開催している国立新美術館の南雄介副館長は、「目に見えるものに宿る神秘を芸術の形にしている」ところに独自性があると説きます。マグリットの絵を見ていると、実際に目に映る世界とは違うけれどこれもまた現実なのかもしれない、と思わされる理由は、そんなところにあるのかもしれません。

画業の全貌を見ることができる回顧展

《 白紙委任状 》 1965年 81.3x 65.1cm 油彩/カンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1985.64.24 © Charly Herscovici / ADAGP, Paris, 2015
過去最大規模の回顧展となる本展では、世界10か国以上から集まった約130点が年代順に並び、その画業の全貌を見ることができます。未来派やキュビズムの影響が見られる初期から、シュルレアリスムとの出会いと達成、印象派風の描法にシフトした時期を経て、シュルレアリスムに回帰した晩年へ──。本当にマグリット?と疑いたくなるような作品に囲まれる、「初期作品」「戦時と戦後」の章の興味深さもさることながら、やはり圧巻は、誰もが一度は目にしたことのある代表作が次々と出てくる「回帰」の章。

マグリットの最も重要な作品のひとつに位置づけられる《白紙委任状》も、この章の作品です。林の中を馬に乗って闊歩する女性が描かれていますが、よく見ると、騎手と木々の前後関係がおかしなことになっています。後方にあるはずのものが、手前にも存在してしまっているのです。マグリットは“見えるものと見えないもの(隠されたもの)の関係”に関心を持っており、それはマグリット作品の鍵とも言うべきテーマとなりました。

作家自身の言葉を作品解説に代えて

《 ゴルコンダ 》 1953年 80 x 100.3cm 油彩/カンヴァス メニル・コレクション The Menil Collection, Houston © Charly Herscovici / ADAGP, Paris, 2015 Image may not be reproduced without permission from the Menil Collection.
一体マグリットは、なぜそうしたテーマに興味を持ったのだろう? なぜ特定のモチーフを繰り返し取り上げたのだろう? そんな素朴な疑問に答えるかのように、本展では作品解説に代えて、作家の言葉がキャプションとして添えられています。マグリット自身が手紙に綴ったりインタビューで語ったりした言葉は示唆に富み、決して単純に読み解けるようなものではありませんが、私たちに様々な視点を投げかけてくれます。

そんなマグリットの言葉を、俳優の石丸幹二さんが“謎の山高帽の男”に扮して朗読してくれる音声ガイドも、本展の話題のひとつ。渋い声と軽妙洒脱な語り口は、「マグリット展」の雰囲気にぴったりです。石丸さんはまた、ナレーターと共に作品の背景や特徴も解説してくれるため、キャプションが作家の言葉のみで構成された本展をより深く楽しむ助けにもなってくれそう。“謎の山高帽の男”とは何者なのか、最後まで聞くと、そのヒントが見えてきます。

文/町田麻子


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