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REPORT展覧会レポート

2012.05.29

国立新美術館開館5周年『セザンヌ-パリとプロヴァンス』展 (2012.5.29更新)
 


東京・六本木の国立新美術館で6月11日まで開催中の「セザンヌ─パリとプロヴァンス」展。今回は、フリーのキュレーターであり、食生活などから画家を研究するアートライターでもある林綾野さんをゲストに招いたプレスツアーの様子をレポートします。「近代絵画の父」と称賛される一方で、難解というイメージも持たれがちなセザンヌの作品を、林さんならではの身近な視点で解説。今回の展覧会を機に上梓した「セザンヌの食卓」の取材のため、20カ所以上にも及ぶゆかりの地を改めて回り直した体験を元に、孤高の画家の横顔を紹介してくれました。


林さん曰く、セザンヌが描いた場所に行っても、そこに作品通りの風景は存在しないそう。それは画家が、そこに何があるかではなく、どう描けば自分のイメージ通りになるかを考えたからでした。セザンヌが繰り返しモチーフにした故郷のサント=ヴィクトワール山を見に行った林さんは、一見味気ないのに、1週間を通じて様々な時間・角度から見ていると、実に多彩な表情を見せることに気付きます。短い期間でも感じられる偉大さが、それを見ながら生まれ育ったセザンヌにとってどれほどのものだったか……。今回展示されている複数のサント=ヴィクトワール山からも、実際の風景とは異なる様々な構図でその美しさをとらえようとしたセザンヌの想いを感じ取ることができます。


セザンヌが見えた通りに描かないのは、風景画に限ったことではありません。一見パースが狂っているように見える作品も、じっくり吟味しながら、画面を積み木のように構成した結果。代表作「りんごとオレンジ」にしても、丸いものを二次元上で立体的に見せかけるようなデッサンはあえて使わず、一つ一つの果物の奥を意識し、形と色が響き合ってそれぞれが丸く見えるよう、緻密に構成されているのです。美味しそうな果物というより、「物」として描かれているように見えるのも、そのためかもしれません。


今回の展示では、晩年のアトリエが再現されているのも大きな話題の一つですが、セザンヌは雨の日も風の日もそこから外に写生に出かけ、それが元で亡くなったと言われています。まさに「生涯を絵に捧げた画家」の執念の結晶が一堂に会する今回の展覧会も、残すところあとわずか。「時には風の音まで描き込まれている」(林さん) セザンヌの作品を生で鑑賞できる機会を、どうぞお見逃しなく!

(町田麻子)



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