MENU

MuseumCafe/ミュージアムカフェ

博物館・美術館情報サイト「ミュージアムカフェ」

COLUMNコラム

2010.04.23

旬な人インタビュー

佐伯祐三アトリエ記念館をつくる

 

4月28日、佐伯祐三の誕生日に東京・新宿区中落合にある佐伯公園内のアトリエが新たに「佐伯祐三アトリエ記念館」としてオープンします。洋画家・佐伯祐三の国内の制作拠点であったアトリエを復元し、記念館として生まれ変わらせた建築家、照明プランナーの3名にその経緯をうかがいました。

日本で唯一の活動拠点であった自宅兼アトリエ

佐伯祐三アトリエ記念館

佐伯祐三(1898~1928)は大正から昭和にかけて活躍した洋画家。30歳という短い生涯のなかで2度にわたり渡仏し、パリの街角などを独特の画風で描いた作品で知られています。そんな佐伯が日本で唯一、アトリエを構えて活動拠点にしたのが中落合でした。もともと住居兼アトリエを構えていた土地は、佐伯が1928年にパリで亡くなり、その後妻の米子夫人が1972年で亡くなってから、1975年に新宿区がそのままの敷地を「佐伯公園」として保存してきました。

70年代当時のまま佐伯のアトリエを残していましたが、今回その外観、内部ともに改修を行い、佐伯と自身も画家として活躍した米子夫人の半生がわかるアトリエ記念館としてオープンすることになりました。オープンは4月28日、この日は佐伯の誕生日でもあります。

区民とともに作り上げたアトリエ記念館

佐伯祐三アトリエ記念館
今回、この記念館の改修にあたっての経緯を建築家の吉田多津雄さん(吉田多津雄建築計画事務所)、堀岡勝さん(堀岡建築研究所)、照明プランナーの稲葉裕さん(フォーライツ)におうかがいしました。

旧宅部分の老朽化が進んだ1980年代に、アトリエと旧宅の一部(洋間)を残してその他の部分は取り壊されました。そして今回は残された部分の老朽化に伴い、公園と建物の在り方について、新宿区へ提案した吉田さんと堀岡さんのプランが認められ、区民や公園の近隣住民なども含めた実行委員の方々の意見を集約するかたちでアトリエ記念館がオープンしました。

「2年前、建物は老朽化が進んだ状態でした。そんな状態を見てきた近隣住民のみなさんなどの委員会で、この公園の在り方について何度も話し合いの場を設け、今回のようなかたちになりました。アトリエの内部は写真などといった資料も少なかったため、ささいな情報でもいいから再現に必要な情報を得るため、見る、測るといった調査を行いました」(吉田さん)

「建築家の視点とはまた違った意見を住民のみなさんは持っていて、生前の米子夫人のことを知っている方もいらっしゃいました。当初、僕らの提案のなかでは米子夫人をご紹介するスペースなどは考えていなかったんですが、彼女についての紹介も入れたいとの声から、今回そういったコーナーも設けています」(堀岡さん)

アトリエ内部は佐伯の画業を紹介する年表や下落合との関わりを記したパネル、ライフマスクやイーゼルに飾られた作品のレプリカが置かれています。

「展示室の照明は記念館としてお子さんからお年寄りまで多くの人に来てもらいたいという想いから、いろいろな展示内容に柔軟に対応できる計画としています。また、この記念館にはボランティア解説員がいて佐伯祐三さんの生涯を説明してくれます。さらに落合の街を紹介するウォーキングツアーなども予定されているので、ここを起点に新宿(落合)の文化を感じてもらえたらいいですね」(稲葉さん)

この場所から、文化を身近に感じてもらえれば

佐伯祐三アトリエ記念館
佐伯はこのアトリエで制作をしていた1923年~1926年の間、「下落合風景」というシリーズを手がけています。約40点制作されたといわれているこのシリーズは、当時の落合の風情を感じ取ることができ、また佐伯のパリでの作品とはまた違った魅力のある作品群です。記念館には「下落合風景」シリーズについての解説とともに代表的な作品もパネルで紹介しています。シリーズの中でも一番の大作であった『テニス』はその原寸大の複製パネルをイーゼルに乗せ、アトリエの雰囲気を演出しています。

またアトリエと洋間にはそれぞれ映像で佐伯について解説するコーナーもあります。アトリエでは主にその生涯を、洋間ではパリで制作され、佐伯の画業を代表する作品をスライドショーで観ることができます。

記念館をウッドデッキから見上げると、2階部分にドアの名残が。これは、実際に使用されていた頃は自宅の2階部分をつながっていたと考えられているドア。そういった造りも極力、実際の建物の雰囲気を残し、佐伯が生活していた息吹が感じられるように工夫がされています。ウッドデッキは自宅部分の間取りがわかるように、間仕切りを平面的に再現。庭に植えられた植物の多くは新しいものですが、立派な桜の木など、年月を感じられるものもあります。

この記念館が、近隣に住む方々、近代洋画が好きな方々などどんな人でも身近に文化に触れることのできるきっかけとなれば嬉しい。それは設計に関わった人たちの思いでもあります。

佐伯祐三の落合での画業を紹介する展覧会が現在、新宿歴史博物館で開催中。「下落合風景」シリーズ13点などが展示されています。あわせて楽しんでみてはいかがでしょうか。

【新宿区立 佐伯祐三アトリエ記念館】
住所:東京都新宿区中落合2-4-21
開館時間:10:00~16:30(10月~4月は16:00まで)
休館日:月曜日(休日にあたるときはその翌日)、年末年始
料金:無料

(2010.4.26)



↑ PAGE TOP